コンビニの夜勤と僕
自宅から徒歩五分圏内に数件コンビニがある。
私は言わずもがなヘビーユーザーだ。
特に夜勤の時間帯に多く利用させて頂いている。
コンビニのヘビーユーザーの方には理解が得られるかもしれないが、たくさん通うようになると店員さんの顔を覚えていくようになる。
特に自宅から徒歩一分のファミリーマートの夜勤の方はほぼ全員把握している自負がある。
なぜ私が夜勤の時間帯に多く訪れるのか。
それは酒とたばこのためだ。
夜に一人で家で酒を飲むとどんどん酒が進んでしまう。
酒が尽きたタイミングでどうしてもコンビニに立ち寄ってしまうのだ。
夜勤の人達を覚えていくに従って、自分も認識されているのではないかという思考が生まれる。
自分のバイト先であっても、よく来る人は記憶しているし、この人は普段何をしているのかということに思考を巡らせることは珍しくない。
自分もそうした対象であることを恐れているのだ。
「こいつはいつも深夜に来ては、酔っぱらいながら酒を買い足す。」
「マジでただのクズだな」
と思われているのではないかと考えてしまって本当に怖い。
そのため、特に行きつけのファミリーマートではめちゃくちゃ愛想を良くしようと心掛けている。
深夜に酒を買いに来る程度にはクズだが、愛想はある程度あるから許してやろうという枠を狙っているのだ。
事実、ファミリーマートではかなり愛想よく振る舞うことを心掛けているので、主観的に店員さんからの対応は良いように感じる。
ただ私はクズだと認識されることを強く恐れているため、時にあえて違うコンビニを利用することもある。
それがセブンイレブンだ。
私の家の近所にあるセブンは体感的に従業員の方の回転が早く、あまり顔なじみの店員がいない。
そこに狙いをつけ今夜はセブンイレブンで酒を買うことにした。
空は雪を表現していた。
雪の影響で次の日のインターンシップが中止になっていた私は合法的に酒を飲める夜を謳歌していた。
プレミアムモルツの500mlと金麦の500mlを持ちレジに向かう。
レジにはアジア系の店員さんがいた。
アジア系なら酒には寛容であるだろうという圧倒的偏見を潜在意識に持っていた私はどこか強気だった。
レジに酒を置くときの罪悪感は全くなかった。
「オレはクズだとは思われていない」
そんな自己意識が自分に自信をもたせた。
家に帰り酒を飲む。
イヤフォンで音楽を聴きながら酔いを嗜む。嗜好だ。
社会の枠組みの中での試行錯誤に苦しみ、紆余曲折の思考を張り巡らしながらそれでも前に進もうとしている自分とは別の存在になれたような気分になる。
そんな気分を味わう内に酒はなくなっていた。
深夜三時のセブンイレブン、客はもちろんいない。
お気に入りの発泡酒を手に取りレジに向かう。
酔いとアジア系の人が酒に寛容であるという偏見が私に恐ろしい行動を起こさせた。
レジで会計の際、店員さんにめちゃくちゃ笑顔で
「頑張ってください!!」
と言ってしまったのだ。
アジア系の人ならばフレンドリーな対応をしてくれると思ったが、滅茶苦茶怪訝な顔をされた。
(なんやこの酔っぱらいは)的な。
店員さんからの印象を気にしすぎる自分にとっては、酔いを醒ます要因として十分すぎた。
「あ、やらかした、」
帰宅後の酒はまずかった。
それからというもの、深夜の時間帯にセブンイレブンを訪れることはなくなった。
自分自身を出禁にした。
「ごめん、もうセブンイレブンには行けないんだ。。。」
アジア系の店員さんは美人だった。